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この半世紀で、夏場の猛暑日の数は実に8倍にも増えたらしい。そして、2018年には東京でも日本の観測史上最高気温に迫る40.8℃が記録されている。
こんな酷暑にさらされる今、現代人のワードローブの見直しはもはや必須なんじゃないだろうか?
そんな陽射しに耐えかねて、南貴之が汗ばむ夏の新たな選択肢として、グラフペーパーで高機能なTシャツの開発を志したのが数年前のこと。
トライアンドエラーを繰り返し、そんな長年の計画がついに形になった。
見えがかりは自然なコットンのブランクT。汗をかいてもさらっさら。
グラフペーパーに加わった吸湿速乾のパックTは、かくしてつくられた。

Text by Rui Konno

―暑いですね。

暑いよ、ホント。どうなってんの。

―暑いので、Tシャツの話をしましょうか。

はい(笑)。いっぱいしゃべってるけどね、もう。

―まだまだ聞きたいこと、あるんですよ。このタイミングで新しいパックTが出た理由とか。

あぁ、その話か。いや、今までのパックTも好きだし着てるんだよ? でもね、俺もう耐えられないのよ。夏に。汗でTシャツが倍ぐらいの重さになってるんじゃないかってくらい。

―すでに気温がすごいことになってますもんね。夏前なのに、今日ももう暑くて。

それで、このまま綿100%のTシャツだけっていうのも問題なんじゃないかと。俺が着れなくなってしまうと。だけど、化繊かぁ…って。

―やっぱり合成繊維はあまりお好きじゃないんですか?

質感がね。スポーツウェアみたいにテカテカしてきちゃうから。なんとかグラフペーパーでそれを解決できないかなと思ったの。まずは素材から開発して…っていうことを、実は4年くらい前から言ってたんだよね。それで、混率とか番手の違う生地を何度も提案してもらったんだけど全然しっくりこなくて。それが、やっとできたっていう。

―これならイケる! となったんですか?

そう。それがコレ。プレーティングっていうつくり方なんだけど、要は1枚の生地の表と裏に別々の糸を出せるやり方なんだよね。体に触れる裏側は速乾性のある、いわゆる機能糸なんだけど、外側には綿が来るっていう構造。だから見た目は綿なんだけど、汗をかいてもよく吸ってすぐ乾くの。

―風合い、本当に自然ですね。普通の100%コットンよりも少しハリがあるくらいで。

そうでしょ。この表側に出るコットンはコンパクトヤーンっていう滑らかな糸を少しだけ強撚にして、最終で毛焼きをしてるの。唯一悩んだのが、この方法だといつもみたいに丸胴ではできないっていうところで。だけど、よくよく考えたらグラフペーパーのサイジングってデカいし、縫い目が肌に触れてゴロゴロするとか別にないよなって。脇にハギがあっても良くね? って。

―え、今さらですか? ずっとスタイル的にクラシックな丸胴が好きで続けられてるんだと思ってました。

いや、もちろんそうなんだけどね。吊り編みの丸胴じゃないと出ない質感があるから。ただ、速乾のTシャツに関してはそんなこと言ってたら100年経ってもリリースできないぞと。実際できあがって自分で着てみたら、全然気にならなかったからこれならいいじゃんと。表っツラは普通のコットンのTシャツだけど、機能が付与されてるっていう一番やりたかったことはひとまずできました。夏用パックTですね。

―ちなみに、その苦節4年の生地選びで、ボツになったものはどんな理由だったんですか?

やっぱり一番多かったのは綿ヅラじゃないこと。ウチの生産のスタッフが「綿っぽく仕上げてやってみました!」って持ってくるんだけど、実際の綿とは程遠くてさ。やっぱり“綿っぽい化繊”じゃなくて、本当の綿じゃないとダメなんだと思ったの。それでプレーティングにしようとなったんだけど、今度は厚かったり薄かったりでつまずいて。フィラメント糸なんで、裏のポリエステルが表に響きすぎて妙にビカビカしちゃったりとか。

―スパン糸じゃない、いわゆる長繊維糸というやつですよね。

そうそう。やっぱり前からつくってるパックTの厚みが絶妙だと思ってて、俺は好きだから今回もあれに近づけたくて。薄いと体のラインを拾いすぎちゃったりもして、数々失敗しました。

―生地を開発したみなさんの気苦労が目に浮かびますね。「この生地ならOK」と伝えたときはどんな反応でしたか?

「やった…………!!!!」みたいな感じだよね(笑)。毎回、「これでダメだったら多分、もう無理だわ…」みたいな感じでくるから。その度に俺は「全然ダメ。もう一回」って。

―ちょっと涼しくなりました。ゾッとして。

(笑)。生地屋さんとか、機屋さん…要はカットソーをつくってるところで、心当たりのところ全部に同じリクエストをしたんですよ。「かなり難しいでしょうけど、実現したらめちゃくちゃお世話になれるはずなので…!」って。それで結局、それを叶えてくれたのが帝人さんだったんですよ。

―だからポリエステル糸も機能的なんですね。

うん。“スズシヤ”っていう糸らしくて、遮熱性があって遮光カーテンとかにも使われてるみたい。柔らかくて肌触りもいいんだよね。だけど、そういう機能的なポリエステルを使う服って普通は軽いことが正義だから薄いのが当たり前で、綿らしさなんてまず求められないのよ。だから、そのバランス感を探るのにはかなり苦労した。あくまでグラフペーパーでやる以上は、日常のファッションであってスポーツウェアじゃないから。

―ゲームシャツとかだとそのままファッションに取り入れられるものも多いですけど、やっぱりテッキーな速乾Tシャツでのおしゃれはハードルが高いですよね。

そうだよね。そういうのが嫌だからこれをつくったワケだしね。俺は都市生活でどう見えるのかしか考えてないから。ドレープの感じも上品になったし、クリーンな感じが好きな人にも気に入ってもらえると思うよ。生地が決まった後もリブの幅だとかネックの広さだとかを何度も調整して、これなら自分が普段から着られるなっていう形に、ようやく落ち着きました。

―すでにいくつか定番のTシャツがある中で、リブの素材だったりバランスも変えてるんですか?

はい。やっぱり生地が変わればそれに合うリブも全然違うの。グラフペーパーの定番のパックTはリブだけを編んでくれてる専門の職人さんがいるんだけど、今回のドライパックTはボディと同じ生産背景でつくらないといけないから、また何度もつくっては試してみて。これからまた自分が着続けて、気付いたところがあったらアップデートするかもしれないけど、ひとまずはこれがver1.0。

―本格的に暑くなるのはこれからだと思いますけど、現段階で南さんが完成品を着てみられた素直な感想、聞いてもいいですか?

一番は、これまでのパックTと肌触りが全然違うね。張り付く感じが全然ないと言うか。たとえば風呂上がりにコットンのTシャツを着たら、汗とか水分を吸ってTシャツが体にピタッとしてくる感覚があったんだけど、ドライパックTはそれがない。着た瞬間からさらっとしてる。吸湿速乾だから、ずっとさらさらした感覚が続くっていうのが近いかも。

―それは嬉しい利点ですよね。気持ちよさそうです。

だから、夏に1枚ではもちろんだけど、夏以外にインナーで着てもらうのにもいいと思うよ。洗濯しても乾きが早いから、部屋干しでも嫌な匂いになりにくいし。多分、グラフペーパーではオール化繊のTシャツはつくらないだろうから、そういう意味ではこのドライパックTが唯一の機能Tになるんじゃないかなと思います。こういうの待ってた人、いると思うんだよなぁ。少なくとも、俺はめちゃくちゃ欲しかったから。もう今の暑さ、異常だもん。

―ですよね…。カラバリはコットンのパックTと一緒ですか?

一緒です。特にグレーは汗染みができやすい色だから、ドライパックTはより着やすいと思うよ。そういう意味でも実用品だし、言ってみれば日常の消耗品みたいなものだから、やっぱりドライTシャツもパックで出したかったんだよね。正直1枚ずつで売れた方が利益は出るけど、選んでくれる人にとってもこの方がお得感があっていいよなって。

―気兼ねせずに着たいものだし、ありがたいです。

そうだよね。しっかし今日も暑いね…。もういい? 終わっても。

―あ、たくさんお話し聞けたので大丈夫です(笑)。今日はドライですね、色々と。

(笑)。いい感じに書いておいてください。よろしくね。




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