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今シーズンのテーマは”SHADES OF GRAY”。
メインカラーに定めたグレーの濃淡、階調、陰影は
どんな発想と手法で洋服に落とし込まれたのか。
クリエイティブディレクター、南貴之に聞いた。
〈グラフペーパー〉、2024秋冬コレクションについて。

さまざまな手法で
グレーの階調を表現。

ーー2024秋冬コレクションのテーマついて教えてください。

南:テーマは“SHADES OF GRAY(シェイズ・オブ・グレー)です。グレーの階調、濃淡、それによる立体感や奥行きを表現しています。インスピレーションはいくつかあって、一つめはイギリスの現代アーティスト、アラン・チャールトンの作品。薄いグレーから濃いグレーまで、工業的な精度でペイントされたキャンバスで階調を作っているんですが、その白い空間に対するグラフィカルな配置が印象的なんです。

南:〈グラフペーパー〉のアイデンティティーの中にグレーという色があって、自分としてもすごく好きな色なので、その階調、陰影をコレクションにしてみようと考えました。ブランドの立ち上げ当初から、陰影というキーワードは常にコンセプトに入っていて、これまでも「グレーだけでいったい何色あるの!?」といったコレクションもあったんですが、今回は少し考え方を変えて、立体や視覚効果を意識しています。例えば、建築物に光が当たって影ができるっていう、立体で必ず起きる現象を平面に落とし込んだり。

ーーそれがわかりやすいアイテムはありますか?

南:例えばこのニット(画像上)。左側が暗くて下が薄くて右がさらに薄いと立体的に見える。要は錯覚ですね。光と影をニットという平面の中で表現しています。ウールナイロンギャバジンのパンツ(画像下)は、はいた時に影になる足の内側部分を黒に切り替えました。構築的な服とか立体的な服を作るのではなく、グレーの階調の配置で平面のなかに立体を落とし込んでいます。

アラン・チャールトンの作品の展示方法にインスパイアされたニットと、インサイドを黒に切り替えたパンツ。ともに立体の陰影を平面に落とし込んだアイテム。

Knit Fine Wool Intarsia Knit ¥40,000 + tax (画像上)
Pants Wool Nylon Gabardine Track Pants ¥42,000 + tax (画像下)


南:単一階調のグレーのアイテムは、質感でひと捻りして視覚効果を狙っています。ペインティング作品の表面には、遠くから全体を見ている時には気づかないタッチがありますよね。その陰影をテキスタイルの段階でテクスチャーとして作っています。 通常フラットな質感の生地を起毛させていたり、もしくは逆にフラットにしていたり。すごくテクニカルなことをしているものもあるし、素材の混率や織り方を工夫しているものもあります。写真では伝わりずらいかもしれませんが、手にとってもらえれば「こんな質感だったんだ」という驚きがあると思います。

南:先ほどのニットはインターシャ編み(編み地の中で別色の糸を切り替えて編み、模様を作る編み方。裏地に糸が渡らないため薄く仕上がり、凹凸が少ないため鮮明できれいな柄が表現できる)で、遠目ではただの斜めの線にみえるんですが、近づいて見ると細かい段になっているんです。8ビットイラストみたいな。まっすぐな線ならどこの工場でもいいんですが、斜めの線は難しいみたいで、インターシャ編みが上手なところじゃないと作れないんですよ。まずこれが作れるニット工場を見つけるところから始めました。

プリントではなく、高度な技術が必要とされるインターシャ編みでテーマを表現しているのが面白い。

表面加工とディテールデザインが生む
テクスチャーの錯覚。

南:テクスチャーの話に戻ると、このジャケットとパンツはウール素材です。

ーーウールなんですか!? ナイロンに見えますね。

南:本来のイメージと逆の印象に仕上げるのは〈グラフペーパー〉ではよくやる手法なんです。

ーー確かに手に取ると、つるっとした質感ですがウールだとわかります。

南:これは生地の設計と表面の毛羽を取る整理加工で表面感をフラットにしています。

ーーデザインがややスポーティなのも素材を錯覚させてるんですかね。

南:そうですね。昔の〈NIKE ACG〉にありそうなジップアップブルゾンをウールで作っていたり。しかも、ウールなのに縫製をしないでシームテープで止めることで、無駄な縫製を減らしていたりするので。


つるりとフラットに仕上げられたウールで作ったジャケットとパンツ。

Jacket Light Doeskin Stand Collar Jacket ¥68,000 + tax
Pants Light Doeskin Wide Cargo Trousers ¥45,000 + tax

Jacket Wool Nylon Gabardine Shell Jacket ¥52,000 + tax

シームテープで止められたウールブルゾンのポケット部分。

南:逆に表面感を出したのはこのフラノのカバーオールとパンツ。フラノって、梳毛糸(コーミング加工を施した太さが均一な糸)を使って綺麗にフラットにすることが多いのですが、これは表面感を出す加工をしています。ペインティングの作品のように近づいていくとざらザラザラ、ボツボツしているようなイメージです。

ーーどの服も遠目で見た時と間近で見た時で印象がが違いますね。騙されるというか。

南:ちょっとマニアックですが、コレクションラインは常に実験なので(笑)。


Jacket Flannel Serge Coverall ¥75,000 + tax
Pants Flannel Serge Two Tuck Wide Pants ¥48,000 + tax

制服などに採用されるフラノ(フランネルサージ)を起毛させて柔らかな表情に仕上げたカバーオール。

あえて厳密に合わせなかった
グレーの色調。

 ーーグレーといっても、とてつもない種類の色調がありますが、どうやって絞り込みをするのでしょうか。

南:青みがかったグレーが好みです。赤みのあるグレーは選びませんね。色のチェックの際に赤く振れた時には必ずやり直ししています。常々、日本には赤いグレーが多いなと感じていて。海外のブランドはグレーの出し方が上手いところが多いですね。おそらく水が違うとか色々あるんでしょうね。アルカリ性、酸性のペーハーとか。革の色出しも圧倒的に海外の方が綺麗。気候とかも関係しているらしいですね。

ーー今回はどれくらいのグレーのバリエーションがあるんでしょうか。

南:グレー、チャコールグレー、ライトグレー、ダークグレーなど、設定自体は5色くらいです。いつもなら、決めた色にぴったり合わせているんですが、今回は生地によって色が違っていてもいいという考え方にしています。偶発性も取り入れることで、グレーの階調表現の奥行きになると思って。今回のコレクションのポイントのひとつですね。素材の異なる服をレイヤードするこで、グレーのグラデーションを狙っています。

ほぼ同じトーンのジャケットとパンツ、カフタン、タートルネックニットを合わせたスタイル。素材ごとのわずかな素材の揺らぎが奥行きを作り出している。

南:グレーのグラデーションを作るのに便利なのがカフタンです。アフリカに行った時に買ってきたんですが、着て見ると面白くて。短い丈のジャケットとパンツの間に陰影を作り出すために、もう1レイヤー足したいけど、スカートだとか腰巻きだとなんだかなと思って作ってみました。素材は薄手のウールで、スニーカーと合わせてもいいし、革靴でもかっこいい。

ーールックを見ているとグレー以外の差し色も効いていますね。

南:差し色はエンジ(BRICK)と蛍光イエロー(NEON YELOW)です。アラン・チャールトンさんは絶対に使わない(笑)。なんでエンジかっていうと、〈ラフ シモンズ〉が初めてパリでランウェイショーをしたときのコレクション(1997年AW)がエンジとグレーだったんですよね。それがすごく印象に残っていて。あと、名前を失念してしまいましたが、バレーダンサーの作品でグレーとエンジが混ざり合っていく映像も。そんな記憶があって、グレーとエンジのコンビネーションが好きなんです。蛍光イエローはちょっとしたアクセントとして、ナイロンベルトやドローコードなどに採用しています。

差し色はエンジと蛍光イエロー。コーディネートのアクセントに活躍するナイロンベルトは今季初リリースの新アイテム。

ーーグレーとエンジの組み合わせがすごくモダンに見えます。

南:だけどジャケットにパーカーを合わせていたり、ファッション的な目線で行くと意外とアメカジなんですよ。1990年代とか2000年ぐらいのストリートファッションが合体しているような。それをすごく削ぎ落としているんです。ステッチだったりとか、無駄なものはできるだけ排除しています。

注目したい2024秋冬シーズンの
キーアイテム。

 ーー注目すべきアイテムを教えてください。

南:ブルゾンはいつもシングルしか作らないんですが、今回はダブルを作ってみました。ライダースジャケットみたいにならないように、できるだけ上質にしたくてムートンで作っています。襟は立てて着られるようになっています。首を守ればなんとかなると思っているので(笑)。ティアドロップ型のファスナーはイタリアの〈ラッカーニ〉。シンプルで普通の服を作るので、こういう付属品とかディテールにはこだわっています。

Jacket Sheep Mouton Aviator Jacket ¥190,000 + tax


南:パーテックスのアイテムもおすすめです。薄くて軽くて暖かいというのが秋冬コレクションでやりたいことなんですが、これはいいですよ。真冬に1人だけ異常に薄着してるのにまったく寒そうにしてない人がいる、みたいな感じ。ネックウォーマーはルックでは同素材のアイテムと合わせていますが、アクセサリー的に使ってみてください。ニットに合わせてテック感をプラスしてみるとか、面白いと思います。

Graphpaper 2024 Autumn & Winter Collection 商品一覧

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