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確かに話題性やインパクトはコラボレーションの大きな魅力のひとつだろう。
だけど、きっとその本質はそこじゃない。培われたものづくりのストーリーと、
新たな風を吹き込むアイデアとの邂逅こそが、共作の本当の醍醐味と言えるはず。
そんな意思が静かに滲んだグラフペーパーとプーマによる初のコラボレーション。
南貴之とプーマジャパンの野崎さんの会話から、プーマの特異なコラボの歩みと
その現在地が見えてきそうだ。

Interview & Text by Rui Konno

―コラボのお話をするにあたり、改めて野崎さんのご紹介があったほうがいいかなと思っています。

南貴之(以下南):僕はプーマの方に、「プーマの文脈を一番知ってるのは野崎さんです」っていうふうに最初に紹介されたんですよ。

野崎兵輔(以下野崎):最初はそうでしたね。プーマハウスでお会いしたときに。

南:それで、僕が「プーマのアーカイブをできる限り全部見せてほしい」って無茶を言ったら、野崎さんは私物とかまで持ってきてくれて、プーマハウスで見せてくれたの。「これはこういう時代背景で…」とかって説明をしてくれて。

―言ったらヒストリアンみたいな役割ですね。

野崎:僕はトレードマーケティングの担当になって3年目なんですけど、その前はプーマハウスにいてPRをやってたから、ブランドのヒストリーとかプロダクトについてお話をすることが多くて。その名残をいまだに引きずってるのかもしれません(笑)。

南:だから対談させてもらうなら、野崎さんとでしょ、って。

―なるほど。じゃあ、さっそく今回のコラボの経緯から聞かせてもらえましたら。

南:このぺったんこの…ロープロファイルっていうのかな。そんなスタイルが2000年ぐらいに出てたのを当時から僕は知ってて、スピードキャットプラスっていうモデルを見たときに懐かしいなぁ、なんて思ってたんです。僕らがプーマのコラボレーションをやらせてもらえるとなったときに、この靴でやってみても面白いかもと思って。プーマさんにお話したら「やってみたいです」と言ってもらえて。

野崎:僕もそれ、知りたかったんですよね。そのときはうちのMD、営業チームとやりとりしていただいてたんで、どうやって始まったのかは僕も知らなかったんですよ。

南:そうなんです。で、コレクションのテーマが“アレンジメント”で、いろんなものをコラージュしたりするっていうコンセプトが決まってたから、パッと見は単色に見えるけど、全部の素材を変えてみたらどうかっていうところに行きついて。

―同色のスエード、ヌバック、スムースレザーの切り替えにしたと。

南:うん。元のスピードキャットプラスがスポーティな配色だからそれを逆手に取った方が格好良くなるかなと思って。同じ色でも素材ごとに微妙なニュアンスが変わってきたら面白いんじゃないかっていう想像だったんだけど、想像以上に良くなったし、上品に仕上がったなって。
野崎:実は今回のベースになってるスピードキャットプラスっていう靴自体は、オリジナルにないんですよ。2025年のニュースタイルなので。

南:スピードキャットPっていうのとも似てるけど、また違うんだもんね?

野崎:また違うんですよ。でも、どこか既視感もありますよね。今、普通のスピードキャットを若い子たちが履いてくれたりするんですけど、その子たちは当然、当時を知らないんですよ。「だけどなんかいい」、「カワイイ」みたいな文脈で買ってくれてるっていうのが、すごく不思議な感じがします。自分なんかは当時を知ってるので懐かしいなって思うんですけど。

―ずっとアメリカンなバッシュやランニング系のスニーカーが強かったところに、ヨーロッパのフットボールシューズが盛り上がってきて、そこからのスポーツ感の流れみたいなものは感じますよね。

野崎:そうですね。スピードキャットプラスもインラインはもっとスポーティなんですけど、今回のグラフペーパーさんはワントーンできれいに大人っぽくしてくれて。プーマだけでつくるともっとポップなカラーリングになるんで。> 左 : PUMA Speedcat Plus / 右 : PUMA × Graphpaper Speedcat Plus GRAPHPAPER

―やっぱりスポーツが前提だとワントーンとかっていう発想にはなかなかならないですよね。

南:ないよね。普通に考えたら。

野崎:そうですね。どうしてもラインに色を入れたがるから(笑)。これは2001年のカタログなんですけど…。

南:ヤバ。こんなのあるんですね。スピードキャットが出たときの?
> PUMA 2001年のカタログ

野崎:出たときのです。この最初のページに載ってるのは実際にF1レーサーが履くプロ仕様のもので、その次のページからライフスタイル向けのレプリカが出て。それのローカットバージョンっていうのが今のスピードキャットの元ネタですね。

南:この頃ってこういうドライビングシューズがいっぱいあったんだね。

野崎:そうですね。プーマは1998年からこのモータースポーツカテゴリーを始めてるんですけど、最初は市販されずにウイリアムズ・レーシングにモータースポーツ用のギアを供給するっていうところから開発を始めてるんですよ。

南:そうだったんだ?

野崎:はい。で、2001年になってようやくライフスタイルシューズと、市販できるモータースポーツのギアを出していくんです。その何年か前ぐらいから、スポーツとファッションがちょっと近づいてきた時代があって。特に’98年のジルサンダーとのコラボはすごく大きくて、そこから潮目が変わってきた気がします。今までどこも手を出していなかったようなモータースポーツっていうところにもチャレンジしていく、みたいな。

南:なるほどなぁ。

野崎:それで2000年ぐらいになるとガラッと変わり、切り替えのデザインの時代になってロープロファイルのスニーカーも色々出てきたりします。モストロとか、スプリントっていうモデルとか。スピードキャットも、まさにそういう時代の靴ですね。

南:野崎さんが今日履いてるプーマはジョウンドのやつ?

野崎:そうです。ジョウンドのコラボのモストロです。オリジナルは2000年に発売されてるんですけど、当時、ピーター・シュミットっていうダナキャランにいたフットウェアのデザイナーをプーマが引き抜いてきてるんですけど、その人がつくったモデルです。

―やっぱり当時から、そういうデザイナーの知見は欲してたんですね。

野崎:それはあると思います。当時のプーマのトップだったヨッヘン・ザイツっていう人は生え抜きでCEOまで上り詰めた人なんですけど、彼がやっぱりそういうファッションやスポーツだけじゃなく、いち早く異業種とのコラボレーションをやったりして。

南:その辺、プーマは本当に早かったよね。一番早かったんじゃないかな? フィリップ・スタルクともやってたよね。

野崎:やってましたね。“less is more”っていうテーマでスリッポンをつくったり。その前にはミハラヤスヒロとやったのがドメスティックからグローバルにつながっていったり。本当、いろんなことをやってましたね。僕はその当時、まさに営業をやってたんで色々経験しました。

南:ファッションとのコラボのスニーカーという文脈って今はいろんなブランドが当たり前にやってると思うけど、プーマが先駆けですよね。

野崎:そうだと思います。直近で行ったらバレンシアガだったりとか、今回のグラフペーパーさんとのものづくりだったりで、そこを次のフェーズに行かせたいなっていう思いはありますね。

南:でもやっぱりジルサンダーとのコラボレーションが秀逸だったね。今見ても格好いいもん。

野崎:もともとジル・サンダー本人は「シルエットのきれいなボクシングシューズをつくりたい」というふうにプーマに言ってきたらしいんですよね。だから、昔から華奢なソールを求めていた所があるみたいです。南さん、あれ買われたんですか?

南:前にヴィンテージで見つけて買って来たんですよ。オランダで。モデルはキングだったかな? ベロを折り返さないやつ。

野崎:2006年のやつですね。コンディションが良くてメンズサイズとなると、本当に出てこないですよ。あれは。

南:見つけて「おぉ!」ってなって、すぐ買いました。100ユーロとかで。

野崎:僕もジルサンダー プーマはいまだに欲しいです。

―南さんの私物で拝見しましたけど、レザーの風合いもいいですよね。革で言うと、今回のグラフペーパーのスピードキャットプラスのレザーもちょっとインラインとは違いますよね?

野崎:インラインのものよりもっと上質なレザーを使ったんですよ。特に、わざわざ銀面を加工するヌバックは、インラインではほとんど使われない素材です。違う素材をワントーンで揃えるのは結構難しいんですけど、うちの開発チームがそこはすごいケアしてくれました。なるべく色ブレは出ないようにしながら、素材ごとのニュアンスは出せるように、って。

南:ありがたいですよ。個人的にプーマの靴にヌバックレザーってすごく相性がいい気がしてるんだよね。ヌバックを使うアイデアを、実は今、他にも出してるんだけど。

―色合いが絶妙だなと思うんですけど、このグレーベージュに決まった経緯も教えてもらえますか?南:グレージュは今回のコレクションのカラーのひとつで。今までにいろんなスニーカーをつくってきたけど、こういう色のワントーンってなかったから、面白いかなって思ったのが最初かなぁ。

野崎:新鮮ですよね。グレージュのワントーンってスニーカーで見たことがなかったし、それを全部天然皮革でやるっていうのも。現代のスニーカーってどこのメーカーでも、薄いベースのレザーにポリウレタンを吹き付けたものが天然皮革って表記されちゃうんですけど、これは本当に革本来の風合いをちゃんと生かしたレザーですよね。そう言えば、プーマのレザーってなめし方も環境に配慮されているんですよ。

南:え、そうなの?

野崎:はい。LGW認証レザーを使用していて環境への配慮や製品の安全性を確保しているんです。

南:知らなかった。でも、俺も今回ヨーロッパに行ってて思ったんだけど、海外はどこに行ってもみんなそこに気を使ってるのがすごくわかるんだよね。ワインショップのマーチのTシャツですらオーガニックコットンを使ってたりとか、それが当たり前にカルチャーになってる感じというか。日本は正直、そこはだいぶ遅れてるなと。

野崎:向こうはそれが普通の感覚なんですよね。プーマのドイツ本社も、自分たちのオフィスで使っている電力は全部太陽光でまかなってたりしますし。ヨーロッパは特にそれが進んでると思います。

南:それがデザインとして気になるんだよね。単に環境について考えなくちゃいけない、ってことじゃなくて、自分たちで電気を生み出したり、排気をどうするかとかっていうことに対して向き合って、循環させていくっていうことのデザインが。

―日本だと、どうしても環境意識がプロモーションツールみたいになりがちですよね。

南:それがデザインになってないから、みんな違和感があるんじゃないかなって。また海外に行く頻度が増えて、その辺はすごい考えるようになりました。それを組み込んでものづくりを考えるっていうことが面白いことだし、クリエイティブなんだと示してもらえたような気がして。

―あくまでグッドデザインが前提で、その背景にエシカルな側面があるっていう順序も美しいですよね。

南:まずはそこが大事だしね。今回は最初にサンプルが上がってきて、もうすぐに「おぉ! すごいじゃん!」ってなったから。

野崎:開発担当者に聞いたら、「サンプルを発注するときにレザーの色味は特に気にしてました」とは言ってたんですけど、このトーンが一発でできたのはすごいなと思います。

―みなさんの陰ながらの努力があったんですね。

南:サンプル一発目だけど、全然これでいい…ってか、これがいいじゃん、って。サンプルが上がってくるまで確信は持てないし、正直、上がってきてダサかったらやめることも考えなきゃいけないと思ってから。何度もやり直せないなら、もう世に出せないって。それなのに一発OKで。

野崎:本当に良かったです(笑)。

―(笑)。でも色々聞いていて、正直、南さんがプーマっていうブランドに対してそこまで具体的なイメージだったり思い入れを持っていたのは少し意外でした。

南:やっぱり俺も、昔からジル・サンダーの影響が大きかったと思うよ。ジル・サンダー女史の影響が。パタゴニアとかをモードに持ってきたのもあの人だと思うし、アーカイブの本とかを見ながら、やっぱりあの人のミニマルな感じ、好きだなぁって。俺にとってのプーマは、入り口がジルサンダーだったから。

野崎:ジルサンダーとのパートナーシップは長かったですからね。多分、十年くらいやってたんじゃないかな。

南:それ以外だとスウェードとかクライドとか、音楽系の人が履いてたものももちろん好きなんだけど、あれはビースティ・ボーイズとかのイメージが強すぎて。モダナイズするより、イジってない普通のがいいんだよなぁって気がして。

野崎:それは結構いろんな人に言われます。「これはもう、余計なことはしなくていい靴だから」って(笑)。

南:だよね。その点、ドライビングシューズみたいなのは画期的だったんだよね。それでも自分で履いたことはなかったから、いざグラフペーパーで一緒にやらせてもらえるとなったとき、僕らのバランスと合うかどうかだけが不安だったんだけど、コーディネイトを組んでみたらすんなりハマって、むしろいつもと違う新鮮なシルエットになったなって。

野崎:ワイドパンツへの収まりとかもすごくきれいですよね。

南:うん。なんて言うか、革靴っぽく見えるなと思って。同色でまとめてるからっていうのもあるかもしれないけど、特にレディースのバランスにきれいにハマってたんで。

野崎:撮影していただいたビジュアルのコーディネート、あれもすごく可愛らしいしきれいでしたね。

南:スカートで合わせてもワンピースでも可愛いし、わりかし何にでも合わせられるなって。


野崎:僕らもビジュアルを頂いてからインスタグラムでポストしたらそれを見たグローバルの連中からも「これ、俺も買えないの?」って何人かから連絡をもらいました。まさか日本がこんなことをやってるなんて思わなかったみたいで、身内もびっくりする仕上がりだったみたいです(笑)。

―内部だけでは生まれないアイデアを形にするっていう意味では、コラボレーション本来のあり方ですよね。

野崎:そうですね。でも、南さんの頭の中のプーマ像っていうのがジルサンダーから始まってると聞いてしっくりきました。それがあってのこのスピードキャットプラスだったんだなと、すごく腑に落ちたというか。

南:ただ色を変えただけだよね、みたいなのだと物足りないし、多分プーマにとっても僕らにとっても新しいケミストリーは生まれにくいと思うから。

野崎:今回の靴は3年後に見ても全然古くならない靴だと思うんですよね。むしろ、革靴みたいに手入れしながら履いて愛着が増す気がする。長く愛せるコラボレーションなのかなって、そう思います。

PUMA × Graphpaper
Speedcat Plus GRAPHPAPER




野崎兵輔
プーマジャパン トレード マーケティング マネージャー

1971年生まれ、東京都の下町出身。プーマジャパンの設立以前から、30年にわたって日本におけるプーマの歩みを見守ってきたメンバーのひとり。フェイバリットスニーカーは、やっぱりプーマ・スウェード。

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